Stevie Jackson(Belle & Sebastian)、日本初のソロ・ライヴに向けてのインタヴュー

ソロ・アルバム『(I Can’t Get No) Stevie Jackson』(上画像)の発売を記念し、ヴァセリンズのツアー・メンバーでの来日に合わせ日本での初のソロ・ライヴを7月1日と2日に行うベル・アンド・セバスチャンのスティーヴィー・ジャクソンが、来日に向けたインタヴューに答えてくれました。そのソロ・アルバムについてや、日本の印象、そしてベルセバの次回作の予定についてまでを語ってくれた貴重なインタヴューをどうぞ。

 

Q1. あなたはもちろんベル・アンド・セバスチャンのメンバーとして長く活動しています。今までにビル・ウェルズ・トリオや、今回来日するヴァセリンズのメンバーとして、またロシアン・レッドのレコーディングに参加するなどバンド外での活動はありましたが、今回は初めての正式なソロ名義でのアルバムのリリースです。このソロ活動への動機はなんだったのでしょうか?

 

スティーヴィー・ジャクソン(以下S):ベル・アンド・セバスチャンはもう10年くらい一緒にやってきていて、僕らは2007年から2009年にかけてちょっと休みを取ったんだ。だからそこで自分の時間ができたっていうのが一番の理由だね。僕はバンド以外ではそうした他のプロジェクトやグループ、アート企画、友達のために曲を書いたりしてきたんだけど、そうした過去数年の活動でできた曲たちをレコーディングしてみるのは面白いと思ったんだ。で、それをアルバムとして出せるんじゃないかって思ったんだよ。今僕はこのソロ活動にもすごく意味を見出していて、次の作品ももうすぐ作る予定だよ。楽しみだね。

 

Q2. アルバム・タイトルの『(I Can’t Get No) Stevie Jackson』は、ザ・ローリング・ストーンズの「(I Can’t Get No) Satisfaction」からの引用ですね。海外のインタヴューによると、このアイデアは、あなたが以前のバンドThe Moondailsにいた時に、ツアー先でよくこの曲を路上演奏していたことにちなんでいるそうですが、このタイトルの理由についてもう少し聞かせてもらえますか?

 

S:そうだね。路上でこの曲をやるといつも受けがよかったんだ。お金もたくさんもらえたりしてね。で、そのうちメンバーがもじって「(I Can’t Get No) Stevie Jackson!」と言い出してそれが頭から離れなかったんだよね。それもあるし、僕はストーンズが大好きだから、タイトルに使いたかったっていうのもあるんだ。僕のベル・アンド・セバスチャンでの楽曲や歌詞でもストーンズからの影響は強く感じられると思うよ。彼らのすごいファンじゃなければそれに気づかないかもしれないけどね。そうした意味からもぴったりのタイトルだって思ったんだ。

 

Q3. アルバムですが、聞くとそのストーンズを始め、60年代のポップス、ガレージ、フォークからソウル・ミュージックまで幅広いあなたの音楽的影響がよりダイレクトに反映されているサウンドになっていると思います。そうした音楽的影響について聞かせてもらえますか? ファンがチェックできるよういくつか名前を挙げてもらえるとうれしいです。

 

S:エルトン・ジョン、ザ・ブラザーズ・ジョンソン、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、バッファロー・スプリングフィールド、サイモン・アンド・ガーファンクル、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・ゾンビーズ、デトロイト・エメラルズ、セルジュ・ゲンスブール…。分かりやす過ぎるかもしれないし、もっと幅広い音楽を聞いているけど、今影響を受けた音楽と聞かれて頭に思い浮かぶのはこうしたアーティストだね。

 

また今回ソロということで、同じようにバンドにいてソロ作を出したアーティストでお気に入りのアルバムはありますか?

 

S:ルー・リードの『Street Hassle』、ギタリストということに限って言えばキース・リチャーズの『Talk is Cheap』だね。

 

Q4. そうした音楽的影響を元に、アルバムではベル・アンド・セバスチャンよりリラックスして時にラフなサウンドが聴けると思います。今回バンドとしてではなく、自分自身の名前でリリースをするということで、ベル・アンド・セバスチャンと今回のソロでの一番の違いはなんだと思いますか?

 

S:僕のレコードは(ベル・アンド・セバスチャンのアルバムと比べて)より生でラフで、即興的なのは確かだね。今回はリハーサルの音源をレコーディングすることも多かったんだ。スタジオにメンバーを集めて、曲を教えてすぐに演奏を始めるといった感じでね。時にミュージシャンは、その曲を演奏する最初の数回にベストなものを残すことも多いと思うんだ。そうした手法はベル・アンド・セバスチャンではなかなか取らないよね。

 

Q5. 先の質問にも絡みますが、すべての作曲を担当したこのソロのアルバムは、ベル・アンド・セバスチャンのアルバムよりミュージシャンとしてのあなた自身を表していると思いますか?

 

S:そうは思わないね。今までベル・アンド・セバスチャンで演奏したり作曲してきたことは、このソロ・アルバムで表現したのと同じくらい僕自身の一部だと思うよ。このソロも完全なソロというよりみんなの協力があってできた作品だしね。ソロとバンドの違いはこのソロは僕が全部を指揮していて、判断をして、制作にお金を払っているってことくらいだね(笑)

 

Q6. このソロでは、ベル・アンド・セバスチャンのメンバーに加えて、ビル・ウェルズやパステルズのカトリーナ・ミッチェル、ニュー・ポルノグラファーズのカート・デイルとジョン・コリンズ、ザ・カンパニーのロイ・モーラーとゲイリー・トムらが参加していますね。彼らと仕事をするのはどうでしたか?

 

S:ビル・ウェルズとは長年一緒に演奏してきたからね。彼は最高のベース・プレイヤーだよ。パステルズのカトリーナ・ミッチェルとトレンブリング・ベルズのアレックス・ニールソンとはずっと一緒にやりたかったんだ。2人は最高のドラマーだよ。一緒に今回やれてラッキーだったね。ニュー・ポルノグラファーズの2人とは僕がカナダのヴァンクーヴァーのジョン・コリンズのスタジオにいたときにお願いしたらやってくれるって言ってね。それもうれしかったよ。ロイとゲイリーはいつも一緒にやってる仲間だよ。

 

Q7. アルバムには“Kurosawa”という曲が収められています。これは日本の映画監督の黒澤明を題材にしているそうですね。この曲について聞かせてもらえますか? またオフィシャルサイトでは他にも小津安二郎などの名前がこの曲に関連して見受けられますが、他に好きな日本映画はありますか?

 

S:僕の友人のニコラ・アトキンソン(現地のアーティスト)が、映画監督について曲を書いてみたらって言ってくれて、書いたうちのひとつがこの曲なんだ。他にもレコーディングしていないけど、ジョン・カサヴェテスやマーティン・スコセッシ、イングマール・ベルイマンについて歌った曲もあるよ。日本の映画については、まさに今日、2人の姪っこと日本の「崖の上のポニョ」を観たばかりだよ。美しい映画だったね。小津安二郎の映画はすべて好きだね。原節子が出ているのは特にね。彼女をすごく好きなんだ。黒澤明だと「天国と地獄」がいいね。すごい映画だよ。

 

Q8. またあなたはこれまでに数多く来日していると思いますが、日本の印象はどうでしょう?

 

S:日本は大好きだよ。日本に行くのはまるで別世界に行くような感じだね。スコットランドとは全く違うからね。初めて東京を訪れた時は、みんなすごくスタイリッシュで素敵だと思ったね。自動でドアが開くタクシーが最高だったよ。まるで60年代の映画にいるような感じだったね。今でもそう感じているし、戻れるのが楽しみでしかたないよ!

 

Q9. その日本で今回は初のソロ・ライヴがあります。どんなライヴになりますか?

 

S:ソロのアコースティック・ライヴだから、僕とギターのみで、その場で思いついた曲を歌うよ。最近、(カナダのベルセバとも評される)ザ・ヒドゥン・カメラズのマギーと新曲を書いたから、そのうちいくつかも演奏するつもりだし、もちろんソロ・アルバムからも。もしみんなが聞きたければベル・アンド・セバスチャンの曲も数曲演奏するかもね。リクエストも受けつけるつもりだよ!

 

Q10. 今後の活動予定はどうでしょう? ベル・アンド・セバスチャンやこのソロとしての次の作品の予定がありますか?

 

S:今、スチュワート・マードックは、彼の映画「God Help the Girl」の撮影をスタートさせているところで、僕もその映画音楽で少し関わっているんだ。だから年内はその映画に僕らはかかりっきりになるだろうね。ベル・アンド・セバスチャンは来年新作を制作すると思うよ。僕はたぶんソロとしての次回作を今年中に制作すると思う。今、僕はベルセバのボブと、ウェルグリーンとして活動するマルコ・リー、スチュワード・キッド(BMXバンディッツにも在籍、ジョニーのレコーディングなどにも参加するマルチ・プレイヤー)からなる最高のバンドでソロ・ライヴをしているから、それを生かした作品にしたいと思うよ。

 

Q11. 今日の一曲は?

 

ポニョのテーマ・ソングだよ!

 

Interview by Kazutoshi Yasunaga@Office-Glasgow(無断転載禁止)

 


(I Can’t Get No) Stevie Jackson
Stevie Jackson


1.Pure of Heart
2.Just, Just So To The Point
3.Try Me
4.Richie Now
5.Dead Man’s Fall
6.Bird’s Eye View
7.Man of God
8.Kurosawa
9.Where Do All The Good Girls Go?
10.Telephone Song
11.Press Send
12.Feel The Morning